世界経済が戦後の恐慌から完全に脱した言われる1970年代前後、この頃からアメリカの大企業では、すでにオフィスに観葉植物を置くことが一般的に行われるようになり、瞬く間にオフィス街を中心に広がっていきました。
もちろん日本でもホテルのロビーや、レストランなどを中心にそれ以前から植物を部屋の中へ取り込むことが一般化しつつありました。
しかし、このアメリカでの観葉植物一大ブームは、店舗入り口でお客様への歓迎の気持ちに代えてという、日本での歓待や装飾の意味合い、動機とは少々趣を異にしていました。
それは一枚の記事が発端であったと言われています。
見出しは“植物は欠勤者を減らし、モラルを向上させ、生産性を向上させる!”といった感じのものであったようです。
前章の病んだ建物(シックビル)が社会問題化する10年近くも前の話です。
一方日本ではその頃、産業の発展に躍起になって、経済大国への道まっしぐらの時代です。
では何故、アメリカでは一枚の記事がこれほどスムーズに受け入れられたのでしょうか。その答えはおそらく“ストレス” です。
“ストレス”とは、言うまでもなく精神的な圧迫感によって起こる心身の歪みです。
この頃のアメリカでは、労働者たちに少しずつ拡がりつつある“ストレス”が、職場でのモラル低下、出社拒否を招き、いずれは、生産性向上の足かせになる日をすでに予見していたとも思われます。
さて、それではいったい植物のもつ精神的・心理的効果とは一体どんなものなのでしょうか。
まず良く知られているものとして、視覚疲労の回復効果があげられます。
次のグラフを見て下さい。
植物が全くない環境(無刺激条件)、鉢植えの植物を持ち込んだ環境、造花(模造品の緑)を持ち込んだ環境の3通りの条件で、6時間の労働をした場合の視覚疲労と、回復度合いを計測したものです。
緑が目に入るところでの仕事と、そうでないところでの疲労度の違いは一目瞭然と言えます。また、同時に造花による緑ではあまり効果がないことも下記のグラフは示しています。
率 | 心理的騒音低減効果量 |
---|---|
50% | 50.1~4.3% |
79% | 1.7~5.8% |
93% | 2.8~7.0% |
100% | 9.7~13.8% |
最近の研究では、緑が目に入る環境、つまり、緑視率が高いほど、心理的騒音低減効果も増加することがわかってきました。
心理的騒音低減効果とは、実際聞こえている音より、緑が目に入る環境では、うるさいと“心”が感じなくなる、または低減されるという効果です。
キャンプに出かけ、早朝、森を散策する時など、川のせせらぎの音や小鳥のさえずりを、うるさいと感じる人がいるでしょうか。それと同じような意味合いがあると考えられます。
つまり “リラックス”している状態だということになります。
アフリカのジャングルに祖先をもつ私たち人間が、緑を見てリラックスするのは、遺伝子に組み込まれた当然の反応だとする学者もいます。
この緑視率と“リラックス”の関係は、脳波のうち精神安定状態を示すアルファ波の研究によっても実証されつつあります。
植物が目に入る環境では、アルファ波が増幅される。
その結果、血圧が低くなり筋肉の緊張がほぐれ、皮膚の電気抵抗が少なくなる。そして心拍数が減少する。
“リラックス”してしまうのです。
こうしたストレスの低減作用は、一般に植物の持つ“心理的効果”“生理的効果”と言われています。
さて、前項のストレスを低減してくれる “心理的効果” “生理的効果”(リラックス効果) だけではなく、植物は、さらにその実力を発揮する劇的な個性をまだまだ備えています。
その一つは“潤い”です。
突然ですが、現在のお部屋の湿度は、適切であるかどうかご存知でしょうか。
暑いときも寒いときも一年を通してエアコンに管理された部屋の中にいると、それだけで、湿度も適切な状態で保たれていると、多くの人が勘違いしてしまいがちです。
しかし、エアコンで冬場の室温を20℃以上に上昇させると、相対湿度は20%台を切ってしまい、逆に夏場、除湿機能を使って湿度を下げると、同時に気温も2~3℃上がってしまうという実験データが某家電メーカーにあります。
室内の相対湿度が乾燥状態の30%前後になると、目・鼻・喉などの粘膜に影響がではじめ、風邪や乾燥肌の原因に直結すると言われています。
室内での快適な相対湿度の範囲は50~60%と言われていますので、空調機器に任せきりで、室温調整メインの室内環境づくりだけでは、本当の快適さは得られないと言っても間違いではないでしょう。
この実験は、室内に観葉植物(シェフレラ“ホンコン”)を置いて室内温度変化(第1図)と相対湿度変化(第2図)を調べたものです。室内温度の変化には、ほぼ影響は与えていないにしろ、相対湿度の方は、ほぼ快適値に維持する効果が出ている様子がうかがえます。
その他、植物は葉面から蒸散する水分が、夏は気化熱を奪うことによって気温上昇を抑え、冬は熱を放出して気温の低下を防げるスプリンクラー効果。
また、戸外では、植物の有無によって周辺の気温が3~5℃も変化すると言われている緑陰効果などが挙げられます。このふたつの効果については、室内でも充分発揮することできるかどうかが、今後の研究に寄るところが大きい内容です。
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